治療症例
10年前のセラミックの歯に異変…歯に穴が開く「パーフォレーション」とは
「何年も前に、費用をかけてきれいなセラミックの歯を入れた。だからこの歯はもう安心」
そう思っていた歯に、原因のわからない鈍い痛みや違和感、歯茎の腫れなどが現れたら、それは非常に不安なことだと思います。
見た目はきれいなままのセラミック。それなのに、なぜトラブルが起きるのでしょうか。
その原因の一つに、歯の根に”穴”が開いてしまう「パーフォレーション」という深刻な状態が隠れているかもしれません。
今回は10年以上前に根の治療をしてセラミック冠がかぶせてある患者さんの治療の様子をご紹介します。
@takanetjapata 詰め物の中は、むし歯!#マイクロスコープ #歯科治療 #神戸三宮の高田歯科 #歯科臨床研鑽会 ♬ オリジナル楽曲 – 高田光彦Mitsuhiko TAKATA(高田歯科)
セラミックの下に隠れていた問題の正体
まずは内部を調査するため、被せてあるセラミック冠を外さず、上部から慎重に穴を開けていきました。
すると、治療の途中で突然、出血がみられました。 根管治療の処置中に、歯の内部から血が出てくるのは異常な兆候です。
この出血の原因は「パーフォレーション(穿孔)」でした。 歯の根の途中に、本来あるべきではない”穴”が開いてしまっていたのです。
歯を救うための根管治療
この歯を救うには、まず本来の「根の治療(根管治療)」をやり直す必要があります。
パーフォレーションの処置と並行して、まずは汚染された根管を探していきます。
複雑な歯の内部から、慎重に根管を発見しました。
さあ、続けて問題のパーフォレーション部分の治療に移ります。 穴を塞いでいた古いレジン(歯科用プラスチック)を取り除くと、その下から大きな穴が見つかりました。
この歯は、過去の治療で一度パーフォレーション部分のリペア(修復)が試みられていたようです。
しかし、その封鎖が機能しなくなり、再び問題が起きてしまったと考えられます。
MTAセメントによるリペア処置
ここから、パーフォレーションの穴を再び、より緊密に封鎖する処置を開始します。
まず、出血を確実に止めなければなりません。
炎症が起きている組織からの出血がおさまるのを待ち、補助的に「コラーゲンのスポンジ」を押し込んで、完全に止血します。
そして、それぞれの部位に適切な薬剤を詰めていきます。 発見した根管の中には、消毒のための「水酸化カルシウム製剤」を入れます。
そして、問題のパーフォレーション部分には「MTAセメント」を緊密に充填していきます。
今後の見通し
これで、可及的処置は完了です。
しかし、この高度な治療によって歯が完全に治るかどうかは、すぐには分かりません。
MTAセメントによって穴がしっかりと封鎖され、歯の周りの組織が再生・治癒してくれるか、暫くの間、慎重に経過観察をしていく必要があります。
今回の治療例をご覧になり、「自分のあの歯も、もしかしたら…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
「治療したはずなのに、何年も違和感が取れない」
「歯茎が時々腫れたり、膿が出たりする」
「他の歯医者さんで『抜くしかない』と言われた」
当院では、今回ご紹介したパーフォレーション治療のように、精密な診断と高度な技術を要する難症例にも、決してあきらめずに向き合っています。
あなたの大切な歯を残すための選択肢が、まだ残されているかもしれません。
その違和感、ぜひ一度、私たちに相談してみませんか。